激しい息遣い



激しい息遣い

「来て、こっちへ」

 

命令口調の言葉の後、女は寛の勃起したムスコをグイと握り、引き寄せた。

 

逞しい寛の体が、画面いっぱいに広がる。

 

女は黒革の大きなリクライニングチェアに座り、背もたれを倒した。

 

彼女が寛に何を求めているのか、侑香にはわかった。

 

というより、わかったのはそれだけだった。

 

このガスマスクの女は誰なのか。

 

撮影したのは誰なのか。

 

なぜ母がこれを持っているのか。

 

女は、寛に対して命令を繰り返した。

 

「さあ、来て、私を、ファックして」

 

聞いてはならない言葉を聞いた罪悪感で、反射的に侑香は早送りボタンを押した。

 

乱れる画面の中で、寛は椅子に乗ると女の中に押し入った。

 

女の表情は、うかがい知ることができない。

 

しかし、女の柔肌は徐々にピンクに染まっていく。

 

やがて寛は男根を抜去し、ベッドのような椅子の上に寝そべった。

 

入れ替わりに女が膝立ちし、寛の腰に騎乗する体勢を取る。

 

侑香がグッと力を入れた途端に、早送りが解除され、再び音声が聞こえてくる。

 

それは激しい息遣いの音だった。

 

しかも、すごくマイクに近い。

 

淫らな交わりをしている二人のものではない。

 

このビデオの撮影者が、カメラを回しながら興奮しているのだ。

 

「あ……ああ……」

 

女が上から寛の怒張を完全にくわえ込んだとき、画面が大きく左右にぶれた。

 

「すごい……クミコさん、すごい……」

 

その声を聞いて、侑香はビデオを巻き返す。

 

画面の大きなブレの後、聞こえてきたのは、やはり

 

「すごい……クミコさん、すごい……」

 

という声。

 

これは、もう間違いない。

 

母だ。

 

母の声。

 

そして、「クミコ」とは……

 

(あの、理事長……?)

 

侑香は、ビデオのディスプレイから目を外した。

 

ぼんやりと音声だけを聞きながら、考えた。

 

母から「クミコさん」の話を聞いたのは、つい二、三年前のことだろうか。