婚前旅行の夜



婚前旅行の夜

前屈みになり、髪を振り乱して犯す今日子に、少年は呆けた表情のまま、あっけなく果てた。

 

精通を見てまだ間もない男根は、母親より年上の女のヴァギナにありったけの精液をぶちまけて。

 

相手が射精しても、今日子はなおも動きを止めなかった。

 

しかし、ムスコは力を喪って急速に収縮し、朽ち落ちた枯れ枝のように滑り出る。

 

「フフ、アハハ、アハハハ……」

 

今日子は激しい息づかいのまま、低い笑い声を上げた。

 

「どう、よかった?」

 

バタバタという足音が遠ざかっていくのを聞きながら、今日子は裏口の鍵をかけた。

 

童貞の精液が腿の柔肌を伝い下りてくるのを感じながら家に入ると、電話が鳴っている。

 

そういえばずいぶん前から鳴っているようだった。

 

「今日子さん、大変なの、あのね……」

 

電話は、さっきまでいた絵画サークルの仲間の一人からだった。

 

「遠見さんがね、急に、お亡くなりになって……」

 

今日子は茫然とその知らせを聞いた。

 

少年の青白い淫液が足首から床に垂れ落ちていく。

 

遠見夫人が亡くなった。

 

あの男と、自分をつなぐかけがえのない人が。

 

今日子は、浴室に続く廊下の途中で、へなへなと崩れ落ちた。

 

母の死を聞いた瞬間から、人生の時の流れが完全に変わったようだった。

 

何回も頭を下げ、同じような言葉に同じような返答をし続けた。

 

立居振舞の一つ一つまで常に誰かに見られている。

 

そして、常に時間に追われている。

 

告別式の始まる前、侑香は参列者受付のテントに足を運んだ。

 

通夜から引き続き受付係や会計係をしているのは、父の研究室の院生たちだ。

 

空は穏やかに晴れ渡り、松の小枝からさかんに小鳥のさえずりが聞こえる。

 

「あの、遠見の娘の侑香です。

 

お手伝い、本当にご苦労様です。

 

と、徳能さん、いらっしゃいますか?」

 

一斉に黙礼する数人の後ろで、背中を向けて折り畳み椅子に座っていた男が立ち上がり、近づいてきた。

 

背がすらりと高い。

 

侑香の前に立つと軽く頭を下げた。

 

(この人が、徳能さん……)

 

侑香は、恵介との婚前旅行の夜のことを思い出した。

 

彼が同衾の床から電話をしたのが、この人だ。