待ち合わせ場所



待ち合わせ場所

その声とともに、画面の左下隅から母の手が寛に向かって伸びる。

 

侑香は、母の方に近づく寛の肉棒に目が釘付けになっていた。

 

あれだけ激しい交合で今日子は存分に気をやったのに、寛はまだ達していなかったのだ。

 

あれよと見る間に寛の姿は左下隅に消え、しばらく静寂が続いた後、だしぬけに

 

「んーっ、あっ!んーっ、あっ!」

 

という母のよがり声がビデオのスピーカから流れ出した。

 

侑香はそこでビデオを止め、ディスプレイを畳むともとの引き出しにそっと返す。

 

もう十分だった。

 

それ以上母の媚声を聞くと、子宮から淫液が止めどなく溢れ出しそうになる。

 

侑香の女の一番奥の部分に、火がともった。

 

母の衣装部屋から忍び出ると、侑香は天窓からの明かりに照らされた。

 

天窓越しに月を見上げたら、そこから母の声が聞こえてくるような気がした。

 

ホテル・マルブルグの3階に上がると、寛はすぐ近くの柱を背に、じっと立っている女がいるのに気がついた。

 

白っぽい七分袖のニットに、大きな格子縞のスカート姿だ。

 

手提げバッグの口には目印の英字新聞が顔をのぞかせている。

 

寛はすぐそれに気づいてわざと視線を合わさないようにした。

 

持ってきた英字雑誌を、表紙を見えるように丸めてジーンズの後ろポケットにねじ込むと、女に気づかれぬようにその場を離れる。

 

周囲に人気のないことを確かめてから、電話をかけた。

 

「もしもし、カンちゃん?」

 

社長の美詠子(みえこ)はすぐに出た。

 

「僕です。

 

加古井(かこい)さん、いました。

 

これから接触します」

 

「わかったわ。

 

2時半からね」

 

「はい」

 

電話は切れた。

 

寛は時計を確認して、場所を移動する。

 

股間がいい具合に凝固してきた。

 

半時間ほど前に飲んだ「クスリ」が効いてきたのだ。

 

「クスリ」といっても、数種類の香辛料を主原料とするもので、これを飲むと勃起が二時間以上継続する。

 

加古井夫人の視角に入りやすい方向から、待ち合わせ場所のティーラウンジ『紫紺』の入口へとゆっくり向かう。

 

尻ポケットに差した英字雑誌をめざとく見つけ、こちらに走り寄る加古井夫人の足音がした。