親切な後輩



親切な後輩

片手を伸ばして止めようとした侑香だが、結局恵介の好きにさせることにした。

 

学者がどういうものであるかは、侑香自身が一番よく知っている。

 

テレビのリモコンをオンにすると、画面には天気予報図が現れた。

 

(こんな婚前旅行って、アリなのかな……)

 

天気予報を見ながら、侑香は膝頭を抱えた。

 

何にもすることがなくなって、二人は部屋の灯りを消した。

 

そして、それぞれの布団に潜り込んだ。

 

そのとき、恵介は自分の布団を少し戸口の方に寄せた。

 

侑香の布団との間に隙間ができる。

 

侑香は、布団のシーツの冷たさに、躯を震わせた。

 

すぐに寝られそうもない。

 

情けなくて、少し泣きそうになる。

 

性的な意味でなく、抱いて欲しい。

 

温もりが欲しかった。

 

ラン、ラン、シャララン……

 

不意に軽快な電子音が部屋中に鳴り響き、不意に止まった。

 

隣でごそごそする音がしたかと思うと、

 

「あ、川崎先生って、図書館情報学の先生か、わかった」

 

と恵介の快活な声がした。

 

身を寄せて、電話の画面に見入る。

 

「メールで教えてもらったの?誰、これ?」

 

「大学院の後輩で、徳能……徳能寛(とくのう・ひろし)という男です」

 

「じゃ、その人も、パパの弟子?」

 

恵介はうなずいて、パチンと電話を閉じる。

 

「ふうん、そうなんだ……」

 

そう言いながら、侑香は恵介の体に腕を回す。

 

多少強引だったかもしれないが、ごく自然に侑香は恵介の腕の中にいた。

 

恵介の体はぽかぽかと暖かい。

 

「親切な後輩さんがいて、よかったね」

 

侑香は冷えた足の裏をピタリと恵介の脛に当てる。

 

恵介は侑香の背中を優しく撫で上げ始めた。

 

侑香の中で、親愛の情が高まる。